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人間の身体も楽器です

ツイッターで……

“声優、と言うか、人間の身体って本当に楽器だなぁ……と改めて思った現場だった。 本当に声優って仕事は奥が深いね。”
 
と呟いたところ、音響を目指している人などがイイネをしてくれていたので、時間が無いので殴り書きになりますけれど、ちょっと記事を書いておこうかなと思います。
 
要点で言えば、マイクに向かってしゃべれば良いってもんじゃないんですよって言う話です。
 
【基本・人間の発声について】
 
声の発生源はみなさんご存知『声帯』と言われる部分です。
2本の幕に空気を通すことによって音を発します。
 
低い音はテンション低くベロンベロンと震える事で起きますし、高い声は筋肉でもってテンションを上げてビーン!と細かく震えることによって起きます。
 
なので、声を出すと言う事、出し続けると言う事はそれだけ運動し続けているんで、そりゃ疲れますよね。
 
そして疲労の蓄積の仕方も差があります。
低音が出無いけれど高音ならまだ出せますって言う声の嗄れ方をするのも、そう言うことですね。
 
高い音を出す時には筋力でもってテンションを上げ、低い音を出すのには緩めた上で微妙なさじ加減でもって震わせる。
なので、トレーニングで音域を広げることも出来ますし、同時に日頃からトレーニングとかしてなきゃ出せ無くなります。
 
歌手や声優・俳優がボイストレーニングを続けているのにも理由があるわけですね。
アスリートのトレーニングと一緒です。
 
 
そして、その空気を送るのは『肺』のお仕事です。
肺活量ってのは運動のみならず歌や芝居でも大事です。
大きな音を出すのには沢山の空気が必要ですし、一息で長いセリフを言うとしても貯め込む空気の量に依存しますから。
 
肺自体には筋肉はありません。
肋骨を広げる、横隔膜を広げることによって空気を吸い込み、その逆でもって空気を押し出します。
 
肺活量を広げるのには両方を鍛える必要がありますし、瞬間的に大きな音を出すのには横隔膜の力が重要になります。
 
これも呼吸法とかでみなさん鍛えてるわけです。
 
なので、お腹の調子が悪かったり、肋骨にヒビが入ったりしたら充分な発声が出来なくなるわけです。
声を出すと言う点に置いて、呼吸器官をきちんと使うために体調を整えなきゃならんわけです。
 
 
次に音が声になる瞬間はどこだかご存知ですか?
口腔内、特に舌です。
 

まさに楽器たる所以!
 
舌の付け根で口腔内の響きを変え、舌の先や歯・唇などを用いて変化させることで『声』になります。
滑舌と言う通り、舌がなめらかに動かないと次々と声・言葉が出てこないわけですね。
 
そうした結果、口から声が出てきます。
 
 
しかし楽器である身体……ここまで胸・喉・口腔・舌・歯・唇が登場しましたが、実は発声するのに使う身体のパーツはまだまだあります。
 
甲高い音は、口腔だけではなく鼻腔にも響かせることで綺麗な音になります。
鼻腔、つまり鼻の奥です。
綿棒とかを突っ込んで貰うと、思いの外鼻の奥って空間があると解かります(真似をしないで下さい!)
 
鼻づまり声って言われるのがあるくらい、鼻が通らないと上手く喋れないわけで、実は大事で、何なら女性は口と同じくらい鼻孔から声が出てると言っても良いかもしれません(実際にそんな出てるわけではない!響かせてるだけなので!……でも……)
 
そして低い声を豊かにするのには身体そのものを響かせることになります。
人間の身体に置いて一番空洞なのはお腹の中。
特に肺は空気を貯め込むわけですから『空間』が多いわけです。
 
そして低い音と言うのは高い声に比べて共振しやすいと言えます。
意識としては喉の下くらいに響くんです。
 
そんな所を響かせるためにはきちんとした姿勢を保持していないと舌みたいに自在に空間を調整出来るわけじゃないので、身体を動かすことによって調整するんです。
 
高い音なんかは、鼻腔に響かせてその結果『頭蓋骨を響かせてる』ようなものです。
高音を頑張ると、脳がしびれたりするんですよ。
声優さんだと慣れて当たり前なので、気付かない人もいるかもしれませんが……
 
 
そんなわけで、声を出すと言う行為に対して全身を使っているわけです。
 
例え座って声を出すにしても、姿勢が悪ければきちんとした声は出ません。
オペラ歌手が好例となると思いますが、あの人達なんかを見てると「声と言う音は口じゃなくて身体から発声してるんだ」って思えますよね。
 
 
【姿勢について】
 
声を出すのに全身使うと言う事を説明したつもりですが、その為の姿勢と言うのも必要となります。
 
ただ、基本的な姿勢はあれど『絶対的に正しい姿勢』と言うのは無いかな?と思います。
だって、どんな声を出すのかによって姿勢は変わりますからね。
人間の身体ってのはロボットじゃないですから、同じ規格のはずなのに細かいところは千差万別ですから。
もしも、絶対的な正しい姿勢が存在するなら、歌手はみなさん全く同じ姿勢しかしなくなるでしょうね。
しかし似通っていると言う事は、それが効率的な正解があるからなのでしょう。
 
姿勢を決める要素として『音の響かせるポイント』や『呼吸を絞り出し易い』と言った複数の要素が影響します。
 
録音してる時も姿勢がひとそれぞれなので面白いもんです。
役者さんによっては人と違う姿勢になるから恥ずかしいとか思うかもしれませんし、それを変だと笑う人もいるかもしれませんが、工夫した結果の最適解なのであればそれが正解です。
人の姿勢を笑うな!と言う物です。
 
 
【中間まとめ】
 
マイク前で直立してる人もいれば動きまくる人もいます。
どっちが正解とかありませんし、そもそも演じる役によって行き来するでしょう。
 
まぁ、僕個人としては動きまくってしまうのが当然だし、芝居するんだからそれで良いと思ったりしますが……それも好みの問題です。
マイク的には直立でやってくれた方がマイクとの距離がブレ無いので助かりますしね。
 
たかが声を出すと言う事に足して、意識してるして無いにかかわらず、これだけ身体を使っているわけです。
筋肉もそれだけ全身使いますし、喉・声帯にも体力と言うのが存在するんです。
 
僕はよく『声優って仕事も全身を使うアスリートです』って表現して、クライアントさんなんかにこれまで書いたような事を説明すると「ホントですね。ただ声を出すってだけでも相応のトレーニングなどしないと駄目なんですね」と声優の見えない部分の大変さに共感をして頂けるのですが……本当に声をしっかり出すだけでも凄い事なんです。
 
さらに芝居するために、知識や経験を駆使して感情や身体のコントロールをして、そこにキャラクターの感情を込めて『演技』をするんです。
しかも、それを正しくするためには脚本を読めなきゃいけないわけですし……
 
 
中間のまとめ……
 
「声優なんて、ただ台本を見ながら喋っていれば良いんだろ?」って言う人は死ねば良い(笑)
 
どれだけ凄い事をしてるのか。
普段自分達が声を出しているだけに対して、しっかりと声を出す為に意識しなければいけないことが多いのか解かって頂けただろうか?
 
 
そしてここからマイクに付いて話しを進めようと思います。
 
 
【マイクの指向性・軸】
 
マイクは指向性と言うのがあります。
無指向性って言うのも存在しますが、基本的にはマイクは狙った部分の音を拾いものと理解して下さい。
マイクって言っても色々な物があるのですが、今回は『単一指向性(カーディオイド)』に限らせて頂きます。
そもそも、芝居を録音するのにはほぼ単一指向性のマイクしか使いませんしね。
 
むかし、無指向性のマイクを用意して笑われたスタジオも御座いましたが……でも、それも絶対的な間違えでは無いんですけどね、使い方次第だし。
昔のラジオスタジオは、無指向性のマイク1本が当たり前だったし。(今でもそうして録音するのもありです。エンジニアが対応出来るならば)
 
簡単に言うならば、『マイクには正面がある』と言う事です。
その真正面の中心に『軸』が存在するわけです。
一番音を拾いやすい部分と言って良いでしょう。
 
その軸上で、一定の距離の範囲であれば問題無く声を録音できます。
 
理想的なマイクの位置は、と言うと……
『マイクに対して正対し、声の出口である口元がマイクの録音部分と同じ高さであり、距離は20センチほど』
になります。
 
これが一番声を録音しやすいですが……それが綺麗・魅力的であるかと言うとそうもいかないのです。
 
 
【補足】
 
マイクは極端に近付くと『近接効果』と言うのが発生し、低音が強くなります。
それがまた距離感として近くに感じたりもするので、上手く利用したりするのですが。
 
軸に対しての美味しい部分、つまり「きちんと録音出来る範囲」と言うのは距離に比例して広がります。
まぁ、ぼやけてくると言っても良いのですが、この後の説明で必要な部分なので。
 
マイクとの距離が5センチくらいとしたら、軸に対して発声源は軸から半径2センチ以内になると思って下さい。
それが20センチくらい離れていると半径15センチくらいはしっかり拾えます。
喋っている人の横から顔を出して喋れば録音出来ちゃいます。
 
マイクによって特性が違うので、あくまでイメージですが。
 
そんなわけで、マイクと言うのは高さもですが角度なども影響するし、ピンポイントで録音するものでもないのです。
 
楽器でもベタ付けしたり離したりと距離によって音の質が変わるようなものです。
(一般の人には伝わらない……)
 
 
【マイクの位置の最適】
 
声と言うのはアチコチに響いてると説明したと思いますが、それらの響いている音も納めてこそ良い音になります。
 
低音が身体にしっかり響いて出るくらいの人ならば、マイクの軸を口より下にもってきて、口だけじゃなくて肺の辺りまで録音範囲に納めた方が良いわけです。
声が高い人なんかは、それこそマイクの軸を鼻に合わせても良いくらいです。
 
ただ応用編として、響き過ぎて耳が痛い場合は意図的に外してしまう事もあります。
 
一定の距離が離れていれば比較的しっかり拾えているのですが、マイクが近い場合や近くで喋る必要がある時は参考にしてみて下さい。
 
更には、現行の置き場所やマイクへの入り易さ、複数人数に対応する為の工夫などで最適解は変わります。
音響の人がセッティングする時はそう言うのも考えています。
 
役者さんに関しては、それらを理解した上で自分の美味しい声をマイクに乗せるためにどうしたらいいかをちょっと考えると、何も考えないで音を悪くしちゃう人よりも魅力的な音を残せるようになるでしょう。
 
 
【結論】
 
声優は声を出すまでが仕事と言えば仕事ですが、最終的に世の中に商品として出た物が全てです。
楽器たる自分の身体を理解して、美味しい音を録音出来るようにするのも技術の一つかな、と。
 
そして、声優と言う仕事はマイク前で声を出すのだけれど、その為に身体の使い方からマイクへの乗せ方まで技術を要する、俳優とも少し違う専門業なんだと解かって貰えたら幸いです。
 
 
僕は声優と言う職業にリスペクトをしているつもりで、その結果の理解がこの記事の内容です。
僕自身は芝居が出来るわけじゃない。
だからせめて録音ではその人の良い音を取りたいと思っていますし、演出なんて自分が出来ないことを役者にオーダーしているのですから芝居と言うことに対してアプローチした演出指示を心がけています。
 
……ここまで書いて、とってもすっきりしました(笑)
便所の落書きみたいなものですけれど、こんな馬鹿が世の中に居るんだと知って頂ければ幸いです♪

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